2020年04月21日
第8章 寝返り、起き上がりについて
- はじめに
脳卒中の方々が、普段の生活に必要な動作(基本動作)は、寝返り、起き上がり、座位移動、椅子やベッドから立つ・座る、床から立つ・座る、ベッドから車椅子への移乗、車椅子操作、歩行など様々あります。今回はその中でも一番使用頻度がある動作、寝返り、起き上がり動作の基本的なことについて説明します。
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- 寝返り
原則として非麻痺側を下にするように寝返りします。理由としては、麻痺側肩関節の損傷を避け、起き上がりの時に、非麻痺側の肘を使って上体を起こすためです。
① 非麻痺側下肢を麻痺側下肢の下に入れ、なるべく深く足を組むようにする。(図1)
② 非麻痺側上肢で麻痺側の手首を持ち,腹部の上に置くようにする。 麻痺側上肢を腹部に置き忘れることにより、寝返りが行いにくく、肩関節の痛みの誘発につながります。(図2)
③ 顎を引き顔を非麻痺側に向け、麻痺側肩甲帯の回旋から体幹を回旋させ、非麻痺側に寝返る。(図3)
介助は、上下肢を同様の状態にしたうえで,肩甲骨と骨盤部にそれぞれ介助者の手をあてがい、引くようにして手前に寝返らせる。
図1
図2
図3
- 起き上がり
① まず寝返りの要領で側臥位になる。(図4)
② 非麻痺側下肢を使って、両方の足(膝から下部分)をベッドから下ろす。(図5)
③ 非麻痺側上肢を伸ばして上体を起こす。このとき殿部を支点にてこの原理を利用すると、少ない筋力で起き上がりが可能となります。(図6)
図4
図5
図6
介助方法
① 患者様の前方非麻痺側寄りに立ち、膝から下部分をベッド端から下ろし、同時に直接あるいは脇の下から手を入れ、背中を支える。
② 足の重さを利用して上体を起こすように肘を伸ばさせながら介助する。
ポイントとして、非麻痺側脇を開く角度は60°とするもの、あるいは90°以上がよいとする文献などもありますので、様々な角度を試してみるのもいいと思います。また、側臥位でベッド幅が狭いので腕を伸ばせないときは、ベッドと同じ高さの椅子をおいてスペースを広げるという方法もあるようです。
参考・引用文献
1)鶴見隆生 (編):日常生活活動学・生活環境学.医学書院,2004.
2)太田仁史ほか:完全図解 新しい介護,講談社,200