脳卒中&日常生活動作のポイント⑦

2020年04月21日

第7章 拘縮について

 

l         はじめに

 

 脳卒中の患者様において、急性期の段階から廃用症候群の予防が重要な課題の一つです。その中でも拘縮は一度生じると改善が困難な場合も多く、姿勢や動作などに悪影響を与え,生活やQOL(quality of life)を制限する因子になると考えられます。今回は拘縮の予防について簡単に説明したいと思います。

 

 l         拘縮とは

 

一般には、関節に関連をもつ軟部組織の収縮によって、関節が一定方向に運動を制限された状態、いわゆる関節拘縮を意味します。拘縮は、収縮の方向によって、屈曲(曲げる)、伸展(伸ばす)、内転(閉じる)、外転(開く)、旋回などが区別されています。つまり、屈曲拘縮とは、屈曲位に関節が固定されて、伸展のできない状態のことです。

拘縮は、先天性と後天性があり、片麻痺患者様の場合、後天性のもので、筋肉、神経、関節に由来するものがあります。筋肉の萎縮(いしゅく)、短縮によっても拘縮がおこりますし、神経機能の異常によって、筋肉が反射性、痙(けい)性、麻痺(まひ)性に収縮して拘縮がおこることがあります。いずれの場合も、軽度であればマッサージ、関節運動などによって治癒しますが、放置すると二次的な変化として線維および骨による癒着がおこり、関節強直の状態となるので注意を要する。

 

l         片麻痺の患者様の拘縮について

  片麻痺の患者様の拘縮の特徴について以下のことが挙げられる。

 

・     高齢、発症後期間(長い)、動作能力などが低いほど制限角度が大きい

・     非麻痺側にも制限はあり、麻痺側のほうが制限角度が大きい

・     麻痺が重度なほど制限角度が大きい傾向

・     亜脱臼がある方が制限角度が大きい

 

l         家庭でできるアプローチ

 

1.ポジショニング

背臥位

 枕は低めにし、顔は麻痺側を向くようにする。腕を外旋位に、肘と手関節はまっすぐに保ちます。股関節は軽く曲げ、膝関節の下にバスタオルを丸くした物を入れ、少し曲げるようにします(膝関節は曲げすぎない)。

 

半側臥位:

 麻痺側を上にして、背中にクッションを1~2個入れ少し起こす。患側下肢もクッションの上にのせる。上肢は少し後方におき体側と同じ高さまでクッションで支える(肩は十分に前方に出すこと)。

2.座位

座位は下肢においての拘縮予防に効果があります。臥床時と座位時では股、膝、足関節の曲がり具合が異なるため、関節可動域の改善につながります。拘縮予防を目的とした座位は単に時間の延長を図るのではなく、1回の座位時間の短縮、適した車椅子の選択、下肢のポジショニングなどの対応が必要です。

 

3.関節可動域訓練

  • 意識がなくても非麻痺側から行い、安心感を与え、愛護的に行う。
  • 体幹に近いほうの関節を固定し、痛みの起こらない範囲内でゆっくり行う。
  •  関節の可動域いっぱいに行うのが原則であるが、発作直後意識の低下しているときはその2/3程度の範囲にとどめる
  • 各訓練動作は1関節5~6回行い、1日に2~3回実施する
  • ある程度指示が理解できるようになったら、できるだけ早く自分の残った健康な手足の助けを借りて自己他動運動へ進める。

l         注意事項

 関節可動域訓練などは、体の状態により御利用する方にあった方法などもありますので、一度専門機関から指導を受けることをお勧めします。