疾患別リハビリテーション~失語症~

2020年03月13日

<失語症とは>

 失語症とは「大脳損傷によって生じる後天的な言語機能障害」と定義されています。

 大脳の言語をつかさどる場所(言語領域)が脳卒中などにより損傷を受け、「人の言うことが理解できない」「自分の思っているように話せない」「何が書いてあるのかが理解できない」「文字が書けない」といった状態になることと説明できます。

 

<失語症の主な症状>

 聞いて理解すること:音ははっきり聞こえているが、ことばとして上手く聞き取れない。ことばの意味がわからない。

 話すこと:ことばが想い出せない。誤ったことばを言ってしまう。

 文字を読んで理解すること:文字の意味がわからない。

 書くこと:文字が書けない。誤った文字を書いてしまう。

 ※基本的には以上のすべての側面が障害されます。 

 <失語症のタイプ分類>

 失語症には、大きく分けて4つのタイプがあります。細かく分けるともっとたくさんの種類になりますが、大きく分けて4つになります。

1.運動性の失語

   理解は良いが、完全にはうまくしゃべることができないというタイプの失語症です。

2.感覚性の失語

 理解の方に障害があるタイプの失語症です。相手の人や自分が話している言葉をうまく自分の耳で聞いて理解することができないという症状が出てきます。

3.混合性の失語

   1.と2.が混合した状態です。

4.全失語

 1.と2.が混合している上に、それにもまして重いというタイプの失語症です。失語症の中では一番障害が重いタイプになります。

※このように、運動性とか感覚性などときれいに分けて説明はしていますが、実際の 患者様の中で、型にはまったような典型的な例というのはあまりありません。

 

 <失語症に対するリハビリテーション例>

・聞いて理解する力を改善する訓練絵カードをポインティングしたり、文章を聞いて質問に答える訓練などを行います。

①単語(名詞)の聴覚的理解訓練

②動作語の聴覚的理解訓練

③文の聴覚的理解訓練

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④聴覚的把持力訓練 

 単語を記銘する(覚える)訓練で、絵カードを使用して行います。言われた単語(例えば「りんご 犬 電話」)を覚えて、対応する絵カードを連続的にポインティングします。

 

・話す力を改善する訓練

①呼称 :絵カードなどを見てその物の名前を言う訓練です。

②語想起 :用途や定義、カテゴリー(例えば“果物”“動物”)などに対応する語を想起する訓練です。

③簡単な文を言う

④より高度な口頭表出の訓練 :情景画や4コマまんがの説明、テーマについて話すなどです。

 

・読解訓練 :文字と絵カードを対応させる訓練などを行います。

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・書字訓練 :プリントを使用したりして訓練を行います。

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・実用的なコミュニケーション訓練 :重度の患者様は、絵やジェスチャーを中心としたやりとりの訓練を行ったりします。

 ※以上の方法は一部の例であり、この他にも様々な方法があります。 患者様のタイプや重症度などに応じ訓練方法を選択して行います。

 

<失語症者とのコミュニケーションの図り方> 

聞き手の場合 :

状況や表情などから失語症者が言おうとしている内容を推測し、わからない場合は聞き直してみます。その際、例えば「何が食べたいの?」よりも、「ご飯?ラーメン?」のようにYes-Noで答えられる聞き方の方が良いでしょう。 

話し手の場合 :

自分によく注意を向けてから話すようにしましょう。なるべく短く、簡単に話すようにしましょう。写真や絵、簡単な文字を見せたり、身振りを示す、実物や方向を指さしながら話すとわかりやすい場合もあります。

 

~参考・引用文献~

言語療法士 菅野栄子:失語症の検査と訓練 www.phoenix-c.or.jp/~hideo/reha/kouen/010kensa.html 

竹内愛子・河内十郎編著:脳卒中後のコミュニケーション障害,協同医書出版社,p291-312,2003

石川裕治編著:言語聴覚療法シリーズ4 失語症,建帠社,p10,2003

小寺富子監修:言語聴覚療法臨床マニュアル 改訂第2版,協同医書出版社,p180,2006

IPA「教育用画像素材集サイト」http://www2.edu.ipa.go.jp/gz/

横浜コミュニケーション障害研究会http://my.reset.jp/~comcom/